この冤罪Fileは、その名の通り冤罪に特化した雑誌です。
冤罪とは「無実の罪」であり、正に権力の間違いや危険性の
象徴と言えます。この冤罪Fileは「権力のチェック機関」
と言われるジャーナリズム精神の鏡のような雑誌なのです。
これまでに創刊から4号発売されましたが、今回の3月号は
第5号となります。これまでも冤罪の怖さを伝えるに充分な
特集が組まれてきましたが、今回の第5号ではガツンと頭を
殴られたような衝撃を受けました。
去年10月28日、現法相の森英介氏が署名したことにより
処刑された久間三千年(くまみちとし)氏は、実は犯人ではなく
、冤罪だったのではないかという特集が組まれたのです。
何もやっていない一般市民がある日、突然逮捕され、
有罪死刑の宣告を受け、処刑される・・・・・・。
本当にそんなことが起こったのか、特集を見ていきたいと
思います。
この事件は「飯塚事件」と言われ1992年2月20日に福岡県
飯塚市内で登校中の小学一年生の女児2名が行方不明となり、
翌日21日に遺体となって発見されました。
司法解剖の結果、死因はいずれも手で首を絞められたこと
による扼殺。直接的な性的暴行の痕跡はなかったものの、
性器内から被害者以外の微量の血液が検出されています。
警察の聞き込みにより、事件当日に遺留品発見現場の
近くで、紺色のワンボックスカーと中年男性の目撃情報がある
ことが分かり、警察はその車をマツダステーションワゴン、
ウエストコーストと特定します。
この車は福岡県内に165台登録されていて、久間氏は
そのうちの1台の所有者として捜査線上に浮かびました。
久間氏は警察に対して、任意で毛髪を提出。この毛髪が
鑑定に回され、被害者の体内から検出された血液のDNAと
一致したとされたのです。
ところが、警察が念のために別の機関に鑑定を依頼したところ、
なんと今度は「一致しない」という結果が出てしまいます。
これで逮捕を見送ることになりました。
しかしその後もマークは続きます。そのような中、事件翌年の
93年9月、久間氏は飯塚市内の路上で捜査員とトラブルになり、
傷害罪で罰金10万円に処せられるということが起こりました。
この捜査員ですが、それから半年後の94年3月に自殺
してしまいます。詳しい事情は私の手元にはないので分かり
ません。
そしてその半年後、つまり94年9月に、久間氏は死体遺棄罪
で逮捕されます。久間氏の車のシートの繊維と被害者の衣服に
ついていた繊維が一致した、というのです。
取り調べは67日間に及びましたが、久間氏は一貫して
誘拐、殺人、死体遺棄を否認。しかし検察は起訴。裁判所は
有罪として、死刑を宣告。
これが最高裁まで維持され、06年9月に死刑が確定し、
08年10月に処刑されてしまいました。これが事件の概要です。
続けて、この事件の何が問題なのか、それぞれ見ていきたいと
思います。
まず先にも出てきたDNA鑑定。このDNA鑑定ですが、
今で技術も進み精度も上がってきていますが、当時久間氏の
毛髪を鑑定したものは、血液型も一致する確率1000人に1,2人
なのです。
しかも、DNAというのは一人の人間において一つの型しか
なく、いくつかある鑑定技術のどれを用いても必ず一致するもの
なのです。なので、警察機関で一致して、他の大学機関などでは
一致しないということは、有り得ません。つまり、「別人」
ということなのです。
次に車ですが、事件当時の目撃情報が正確だったとして、
その車と事件との関連は、なんら立証されていないのです。
車が同じものだったとしても、福岡県外の車の可能性もあり、
どうやら警察はその点を排除していたという様子も見受けられ
ます。実際はどうだったのでしょうか。
また、久間氏の車の繊維と被害者の衣服に付いていた繊維が
一致したというのですが、上記の通り、同じ車は福岡県内だけで
165台もあり、県外にも数多くあるでしょう。
違う車種でもシートの繊維は同じ、ということだってあるの
かもしれません。
そして自白も一切ない。このように、飯塚事件の犯人が
久間氏だったとするには、あまりにも多くの疑問や不確定要素
があり、DNA鑑定では殆ど決定的な冤罪の可能性を示して
います。
久間氏は逮捕から処刑までの14年間、ずっと無実を訴えて
いました。去年、人権団体に宛てた手紙には、こんなことが
書いてあります。
<真実は一つしかない。私は無実である。人々の目から見て
明らかに冤罪と分かる本件の真実に対して、誤った地裁、
高裁判決を最高裁は正すことなく棄却した。私はこの棄却を
裁判所への落胆と大きな怒りをもって受け止める。
棄却に対するこの怒りは決して衰えることはないし、真実は
必ず再審にて、この暗闇を照らすであろうことを信じて
疑わない。真実は無実であり、これはなんら揺らぐことはない。
私は無実の罪で捕らわれてから、拘置所に十四年間収監されて
いる。今年の一月九日で70歳になった。本件は冤罪事件だけに
、重大な人権侵害である。>
久間氏は、再審請求の準備をしていました。
しかし、確定から2年後にスピード執行されてしまった。
森法相は国会答弁で、どれほどの精査をして執行命令したのか
については、はぐらかして答えませんでした。
久間氏が犯人だったのか、無実だったのか、直接には証拠
を見ていないため、私には分かりません。ただ、私の手元に
ある資料を総合して、厳しい目で見たとして、有罪とする
ことができないのは間違いありません。
ましてや死刑にしてしまうというのは、私には不可能です。
久間氏の他にも無実を訴えている死刑囚はいます。
名張毒ぶどう酒事件の奥西勝氏、袴田事件の袴田巌氏などは
有名であり、皆さんもご存じのことだと思います。80年代
に4人の死刑囚が再審で無罪となったということもありました。
間もなく始まる裁判員制度では、皆さんがこういった
事件を裁くことになります。被害者の無念、遺族の心情、
冤罪という悲劇、死刑という生命への決断・・・・・・・・。
私たちはもう、そこから逃げることは、できないのです。


途中からでしたので全貌はわかりませんでしたが、煽ることなく事実を淡々と語るナレーションに言いようのない恐ろしさを感じ、吐き気がしてきて眠れませんでした。
「DNA鑑定」一抹の疑いも無き、なんと素晴らしい言葉でしょう。ドラマで「おまえの血液型と一致した」と刑事が言って犯人が観念する場面に「血液型の一致確率ってなんぼやねん」とつっこんでいた私をすっきりとさせてくれた「DNA神話」。それが・・・言葉がありません。
国家による殺人です。関係者全員過失致死罪で裁きを受け、検証しないとくり返されます。